鈴木章浩監督作品『ルナの子供』にアニメーションで参加しております・・ぜひよろしくお願いします。

『天使の楽園』が国内外の映画祭で絶賛された鈴木章浩が8年の年月を経て産み落とした本作は、もうひとつの愛のかたちを描く、珠玉のオムニバス。
主役の三人を熱演するのは、小劇場でキャリアを積み、CMナレーションでも高い評価を得る岩元英理、小劇場を中心に活躍する若手の注目株・佐伯佳奈杷、声優として活躍する奥真紀子。それぞれの個性と役柄が溶け合ったその存在感は、新しい世界観を持った物語を、切なくリアルに浮かび上がらせている。脇を固めるのは、アングラ演劇界の異才として知られ、CMのナレーターとしても人気の個性派・田中冬星をはじめ、エレベーター企画公演でおなじみの土本ひろき、天真爛漫な魅力を持つアイドル・持田茜、『十年愛』で注目を浴びた末野卓磨ら個性的な面々。映画初出演となる北澤彰斗、中嶋たまみもフレッシュな魅力 を振りまいいる。
サウンド・トラックはベーシスト、コンポーザー、プロデューサーとして幅広い活動を行う上條高史。キャリアを感じさせる楽曲は、ノスタルジックな叙情からクールなイメージまで、多彩な表情を映画に与えている。また、挿入曲として使用されるのは、国内外で高い評価を受ける、エレクトロニカ/テクノ・ミュージックの数々。kasiwa daisuke、suzukiski、INNER SCIENCE、tanaka scat Le Méprisの音楽が生み出す新しい風景が “今”を静かに浮かび上がらせている。
また、伝説のアート・テロリスト集団『ゼロ次元』のパフォーマンス、世界的注目を集める中村智道アニメーションなど現代アートの効果的な引用も見逃せない。

『ルナの子供』は“子供の生まれない関係”についての物語。語られない秘密と語ることのない夢の物語。そして、今を受け入れ、今、ここにいる自分の存在を許すための物語である。
余命わずかの男と出会い、堕胎した過去をよみがえらせる女、傷つくのを恐れて目の前の愛を受け入れられないレズビアンの美月、セックスを求められないで愛されたいと望んでいる主婦ヒカリ。交わることのない三つの物語は、彼らが見上げる月によって結び付けられ、ひとつの世界を形作る。
『ルナ』。ラテン語ではルーナ。ローマ神話に登場する月の女神。使徒ルナは夜の守護神。最低限の明かりを用意し、眠りを妨げず、また安全な夜道を照らすのが彼女の役割だ。主から秘密と守護を命じられたルナは、夜に生きる者たちをやさしく見守る。夜はすべてを覆い、彼らにやすらぎと休息を与える。
また、ルナは錬金術においては、銀と月を同時に象徴する女性原理。『ルナの子供』は、世界を支配する男性原理とは別の場所から、この世界を語り始めようとする試みでもある。昼と夜が反転し、日常の裏に隠された秘密や夢が、柔らかな午後の光の中にゆっくりと浮かび上がってくるような…『ルナの子供』は、そんな映画だ。
ここに書かれた物語は、とりあえずの始まり。この物語の世界に誰かが現われ、そこで生き始めた時に本当の物語は始まる。誰かの現実がこの物語と触れ合う時、もうひとつの現実が静かに立ち上がってくる。その過程がもうひとつの世界を形作ってゆく。そこに残された時間の集積が、『ルナの子供』である。
今、世界は存在している。そして『ルナの子供』という映画も、もう始まっている。

“彼女の物語”
自宅のベランダで佇む男は隣のビルの非常階段でうずくまる若い女を見つけ声をかける。部屋に来た女はシャワーを浴び、男が誘うのを待つが、男はなにかをためらっているようだった。男は末期ガンで余命いくばくもないと告白し「キスして欲しい」と女に頼む。男はベルリンに行った時の8mmを見せながら彼女に「幸せを感じるときはどんなとき?」と質問する。それぞれの失われた時間がすれ違う…。
“美月の物語”
美月は恋人のマホちゃんの部屋で目覚める。昨日、飲みすぎて頭がちょっと痛い。キスをすると彼女は、「お酒くさーい」と言う。「来るなら電話してよね」「ゴメン…」。マホは派遣社員をしていて年下でとてもかわいい。二人は初めてキスをしてから2週間になる。マホちゃんは「胸、触っていい?」と、下着の中に手を入れて、美月の胸を触る。一人で部屋に残った美月は、自分の胸を鏡で見る。乳房に手術の跡が残っている。マホちゃんの部屋で、男の写真を見つける。美月は彼からマホちゃんを奪ったみたいだ。「彼とはもうセックスしない」というマホに「すればいいじゃん」と美月が言うと彼女はちょっと悲しい顔をするのだった…。
“ヒカリの物語”
雑誌社で打ち合わせを終えたヒカリは家に電話したあと内山くんの部屋に向かう。木造の古いアパート。色の白い美しい若者内山君がいる。「仕事、終わったの?」「うん」と、ヒカリはうなずく。打ち合わせを終え、今は少し空いた時間なのだ。内山君は出会い系チャットのサクラのバイトをしていて、女性になりすまして答えている。チャットを終え、内山君は疲れて、ベッドにもぐり込む。「ずっとぶっとおしだから…」と言って眠りそうになるその隣にヒカリがもぐり込む。「抱っこして」と言われ、彼はヒカリを抱きしめる。「あったかいね」と、ヒカルは安心したようにまどろむ。ヒカリは内山君に引越し代や生活費として50万円を貸している。そして、ヒカリが部屋に来るたびに少しずつ金を返す約束をしていた。借金のお礼のように、彼はヒカリを安心させてくれる。ヒカリはこの関係が少しでも長く続けばいいと思っていた…。